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ジャズ喫茶ベイシーの音8

岩手県一関市にあるジャズ喫茶ベイシー(Jazz Spot BASIE)。熱しやすく冷めやすい私が、未だ飽きること無くベイシーへ通い続けており、ますますジャズの深みにはまり込んでいっています。なので、引き続きジャズ喫茶ベイシーで感じたこと、想ったことなど、散文を書き連ねていきたいと思います。いつまで続くことやら。

第36回目訪問(2009年4月中旬)

 一関にあるジャズ喫茶ベイシーへ行きました。扉を開けると、MILES DAVIS/Sketches of Spainのレコードがかかっていました。このアルバムはSACDが出ており、私の愛聴盤のひとつとなっています。ややトランペットの音がきつい感じで耳に突き刺さる音に聴こえました。私のSTAXのシステムで聴いてもやはりこういう音で、ジャズの生き字引のような店主が調整して出している音でもあり、実際の演奏もこんなんだったんだろうと、想像しながら聴きました。

ジャズ喫茶ベイシー Jazz Spot Basie

 私以外は皆店主と顔なじみかVIPなお客の様でした。しかし、このベイシーのレコードと、私の持っているSACDとでは、規格が異なりますし、マスタリングの時期やエンジニアも違います。それでも、音に類似している部分が出てくるのは面白いと思いました。もちろん私は、ラウドスピーカーでこういう音を出すことは出来ません。

MILES DAVIS Sketches of Spain
(MILES DAVIS/Sketches of Spain)

 そういえば、アメリカ発の金融危機とそれに伴う、世界的な経済の低迷が日本にも押し寄せています。菅原店主の愛車?旧き良きアメリカを象徴しているかのような、キャデラックというブランドをもつGMも破綻の危機に瀕しています。私の持つアメリカ車のイメージは大馬力、大排気量、大型というもので、個人的に全然興味がありません。

 例えば日本で、排気量5000ccとかV8エンジンのアメリカ車が売られているのは、狂気の沙汰としか思えませんでした。当然私は日本に住んでいるからそう思うのであって、広大な国土を長時間余裕をもって運転するには、大型で大排気量、大馬力は必然のカタチであったのだと思います。ガソリンも日本円に換算して格安で、30円/Liter程度あれば、燃費も何も関係なかったのでしょう。

 しかし、原油価格の高騰が一時期あり、湯水の如く油を使えたアメリカ国民も、さすがにアメリカ車について思うところがあったようです。その後原油価格は落ち着きましたが、人口の増加と、途上国での自動車の普及によって、今後原油が再び上昇に転じる可能性はあるでしょう。

 それまでに日本は、電気自動車を実現できるのか。そして、電気を作る際に化石燃料を使う発電所から、それに頼らない発電所へ移行できるのか。さらに、電気自動車は、モーターと極簡単な駆動装置になるので、重厚長大で部品点数の多いガソリン車から、とても単純化するはずです。その時、エンジン車生産にともなう裾野の広い産業を、転換できるのか。

 ずいぶんとジャズと関係ないことを書いてしまいました。

MILES DAVIS FOUR & MORE
(MILES DAVIS/FOUR & MORE)

 続いて、STAR DUST BY LIONEL HMPTON ALL STARSのレコードがかかります。一転してスローテンポなジャズです。バイブの金属音がとても生々しく感じました。この硬質感は、ソフトドームのツイーターではなかなか難しい表現なのでしょう。

 ところで、ベイシーの壁には無数のサインや落書きが書かれています。ほとんどベイシーを賞賛する内容ですが、中には「新幹線代返せ」というのもあって面白いです。そしてその落書きを店主は知ってか知らずか、そのままにしているのも面白いのです。

ジャズ喫茶ベイシー Jazz Spot Basie

 SINATRA AT THE SANDSのレコードがかかりました。シナトラの歌声。歌声だけを聴けば、さすがにベイシーのシステムでも辛い部分があると思いました。声を再生させるのは本当に難しい。逆にボーカルのみに特化させれば、今度は、低音が無くなったり、シンバルのアタック音がいまいちになったりするので、ジャズ喫茶として数多あるレコードを平均的に良く鳴らすには、これがベストなのでしょう。オーディオは難しい。

 IN PERSON ! TONY BENNETT COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRAのレコードがかかりました。これは普段私がベイシーで聴かないレコードだったと思います。

 酒を飲み、タバコを吸い、大声で会話を楽しみ、笑い、そういうジャズの楽しみ方と対称的に、私や多くのお客はひたすら真剣に寡黙に聴くだけになっています。そういう空気は元々ジャズ喫茶には無かったものなのでしょうか。そして、実際ジャズが演奏されていた頃のライヴ盤などを聴くと、今のジャズ喫茶でのジャズの聴き方が、クラシックのコンサートのようになっているのではないかと思いました。

 この日も5枚のレコードを聴いて店を後にしました。

(2009年06月06日)

第37回目訪問(2010年1月中旬)



 かなり久しぶりにジャズ喫茶ベイシーへ行きました。一関市内に雪はありませんでした。扉を二つ開けると、薄暗い店内に入ります。こんなにも店内は暗かっただろうかと思うほどでした。闇の中にぽつぽつと白熱灯が灯っていました。ピアノの上に置かれた一輪の赤いバラが闇のなかで白熱灯の灯りを受けて、より深い赤を出していました。人間の目はなんでも補正して見て聴いてしまうので、これを本当に赤と言っていいのだろうかとも思いました。相変わらず、カッコイイ店内です。



 私が行ったことのあるほとんどのジャズ喫茶は、音と灯りの柔らかさのため、白熱灯を使っていました。一般家庭の照明は、白熱灯から蛍光灯へ、そして最近は発光ダイオード(LED)に変わろうとしています。発光ダイオードでこの柔らかな灯りがだせるのだろうか?と思います。柔らかい灯りと、ノイズを出さず、消費電力が少なく、発光体の寿命が長ければ、私も発光ダイオードの照明に変えてみたいと思っています。

 中央の柱にある掛け時計が見覚えのない新しいモノに変えられていました。同じものを使い続ける風の店主も、小物はたまには新しくするのでしょう。その時計は外枠がスピーカーユニットの金属フレームを模した形状です。近くに寄って盤を良く観ると、ONKYOの文字がありました。てっきりJBLだと思っていただけに意外でした。なぜにONKYO・・・・・。



 STURDAY NIGHT MILES DAVIS IN PERSON AT THE BLACK HAWK SANFRANCISCOのレコードがかかります。トランペットが吹き千切った耳に突き刺さる感じでした。ブラスバンドのトランペットは聞きますが、こういう音ではありません。いやMILES DAVISが目の前に立って、この場で吹くと、こういう音が出るのでしょうか?どれが本当の音なのか判りません。何せ鬼籍に入っているわけだから想像するしかありません。

 オーディオは想像力が必要だと思います。他に、Sinatra Basie Histric Musical Firstなど計5枚のレコードを聴きました。この日は、割とバラード系が多かったように思います。

 帰り、出口に置かれていたHank JonesのクリスタルCDのチラシを見ました。一枚5万円。買えません。いや無理をすれば買える金額なのは確かです。学生だってアルバイトをすれば買える金額です。しかし、買えない。いや、買わない。マニアなら買えという声と、分不相応なものは買わない、いや買えないという心の中で葛藤しながら帰りました。

 そして、帰ってからパソコンでクリスタルCDのホームページを見てみると、他のCDは10万円とか20万円のプライスがついているではありませんか!なになに、jam at BASIE featuring Hank Jones のクリスタルCDがお安く感じてきます。演奏者はハンクジョーンズ。ベイシーでのライヴ。そして、レコーディングエンジニアは伊藤八十八先生。ガラスCD云々は考えずとも、作品としてこのCDは安いでしょう。

 ということで、何かか違ってきているような、危険な方向へ進んできているような気がしたので、ブラウザを閉じたのでした。やっぱり買えません。この決意がいつまで続くのか。これで納得できるのか。将来後悔することになるのかは、全く判りません。

(2010年02月02日)

第38回目訪問(2010年3月上旬)

久しぶりに一関のジャズ喫茶ベイシーへ行きました。昼の開店時間に近い頃に店に入りました。どうしたのでしょう。店の前の看板が一部欠けていました。暗い店内に入ると、The Bill Evans Trio Liveのレコードで、聴き馴染みのある曲が流れていました。ピアノの上に一輪のバラの花がまだ置いてありました。赤より赤い花。どうやら造花だったようです。

ジャズ喫茶ベイシーの看板
(あらまっ!看板がっ!)

 ピアノとドラムがとても良い音で、大きな楽器の音は大きなコーンのスピーカーからでないと、こういう音は出ないのではないかと思いました。低音がスピーカーや部屋で共鳴している感じも全くしません。audio identityのブログによると、ベイシーのスピーカーエンクロージャーは底面開放型だそうです。私は密閉型だとばかり思っていました。しかし、未だこのスピーカーの秘密の全貌を目にしていないので、何とも解りません。私がベイシーのスピーカーの全貌を目にするのは無理でしょうが、耳で掴むのも難しい。

 Bill Evansのような、落ち着いたジャズもいいものですが、この日は、頭を叩かれるような激しいジャズを聴きたいと思いました。続いて、CLARKE-BOLAND BIG BAND HANDLE WITH CAREのレコードが大音量で流れ始めました。まさか、念が店主に通じた訳でもないでしょうが、圧倒的ジャズが押し寄せ、内蔵が揺さぶられる音でした。

 この音は、フルレンジやタイムドメインなどのような音場型スピーカーではなく、各楽器の音色がこれでもかと主張する音像型スピーカーの様に思えます。音場型スピーカーと音像型スピーカーは、通常相容れず、同居する表現は極めて難しいと思っています。しかし、コルトレーンが「そこに立っている。」という表現を店主が使っているので、レコードやシステムの状態によっては、ベイシーにおいて音場型と音像型が同居した音が出てくるのでしょう。きっと。

 DEXTER GORDON ON FLIGHT UP のレコード。サックスの音色は当然として、面白いようにドラムがスパスパ決まるのが気持ちいい音でした。MILES DAVIS FOUR & MORE。これも個人的にドラムが聴き所のレコードでした。この日はドラム祭だったのでしょうか。ドラムが疾走して、他を煽っているというより、一人先に進んでいるようなジャズ。最後に、DUKE ELINGTON THE GREAT PARIS CONCERTの合計6枚のレコードを聞いて店を出ました。


(MILES DAVIS/FOUR & MORE)

 外の掲示板を見ると、2010年のライヴスケジュールが張ってありました。見ると、おなじみのメンバーというか、巨匠ばかりです。今SACDを聴くたび、オースティン・ペラルタ氏のライヴは、行っておけば良かったと後悔しています。後悔先に立たず。

ジャズ喫茶ベイシーの掲示板
(達筆なうえにイラストも描かれるようで)

(2010年04月04日)

第39回目訪問(2010年4月下旬)

 四月も中旬になり、一関のベイシーを訪ねてみました。良い天気だったので、店へ入る前に磐井川の堤防を歩いてみました。鯉のぼりが川を横断していました。



 桜の花はちょうど咲く直前のつぼみの状態でした。



 桜の色も、濃い桃色から白色に近い色の花まで色々あるようです。



 磐井川の堤防と一関市街をしばし散歩したあと、夕方になる頃、暗い蔵の中へ入りました。













 そしてこの日は6枚のレコードを聴いて店を出ました。感想などのメモ書きをなくしてしまったので、これでお終いです。

 その後、5月16日にハンク・ジョーンズ氏が亡くなられたことを新聞で知りました。享年91歳。最期の最期までジャズを弾き続けたのでしょう。CDのJam at BASIE featuring Hank Jonesがベイシーで再現されることはあるのでしょうか。無理なのは解っていても聴いてみたいです。

(2010年06月27日)

第40回目訪問(2010年10月中旬)

 7月17日のジョン・コルトレーンの命日は土曜日でしたが、仕事が入り、レコードを聴きに行くことが出来ませんでした。当日は、全国のジャズ喫茶でどんなレコードがかかっているのか、想像を巡らせていました。

 その後何度かベイシーへ行ったのですが、休日だったり、夜灯りが付いるのに安心して、夕ご飯を食べに行って戻ったら閉店していたりして、なかなかベイシーへ入ることが出来なかったのです。

 一関は何故か、食べ物屋が豊富なので、ベイシーへ行けずとも、ご飯を食べて帰るだけでもいいかと、諦観というものを、歳をとったせいか身につけることが出来ました。


(一ノ関駅前の食堂)


(一ノ関駅前の食堂 昔は豚の角煮を食べた覚えがあります)


(一ノ関駅前の松竹 カツ丼が有名で店内にはベイシー関係者のサインが多数)


(一ノ関駅近くのラーメン屋 丸長ラーメン)


(一関で知らない人はいない? そばの直利庵一ノ関駅前店)


(コッテリバター入りの磐井焼き)


(寂しい雰囲気漂う夜の一関市街メインストリート)


(閉店直後で灯りの消えたジャズ喫茶ベイシー)


 最初に流れていたレコードはPower-Packed Trombones / The Trombones INCでした。

 続いて、Great Jazz Trio / Hank Jones Last Recording。

 このレコードは説明不要でしょう。店主がレコードに針を落とし、ジャケットを立て掛ける前、音が出た瞬間に分かりました。私もSACDで何度も聴いていました。聴き馴染んだ古くて新しい音。モノクロームのジャケットから、迫力と哀愁が感じられました。しかし、そのレコードからは、自分が普段体感できない圧倒的な低音とジャズが聴けました。

 そして低音もさることながら高音も、例えばシンバルのような金属に、硬いスティックがあたるような、「コツッ」とした実在感のある高音が在りました。こういう高音は金属振動板のホーンツイーターからしか聴くことができないのか。

 スピーカーなどよりも遙かに忠実に音を再現するはずの、STAXのイヤースピーカーでは、こういう音は聴けないのです。人間がそれらしく錯覚する音、実在感のある音、忠実な再生というものがどういうものなのか。ベイシーに限らず、色々なジャズ喫茶で圧倒的な表現を聴くたび感動しています。

 Miles & Quincy Live at Montreux

 このレコードは、ゆったりとして穏やかな曲調でした。

 Miles Davis / Get up with it

 Fusionか?シンセサイザーのような電子音があふれて来きて、まさかベイシーでこのようなレコードが聴けるとは思ってもみませんでした。巨匠マイルスの作品なのですが、私はジャケットを見ただけではそれが分かりませんでした。

 全面セピア色で顔で何の文字も示されていないジャケットを見ながら、誰の作品か考えていました。耳に突き刺さるオルガンの音、Fusionのような、プログレのようなジャズを聴きました。

 地元の年期の入った常連の方々なら、ジャズ喫茶ベイシーへ何百回と通っているのでしょう。この文を書きながら、私は40回ベイシーへ行ったということを知りました。

 ほとんどのジャズ喫茶では音質を考慮して蛍光灯は使用していないと思います。しかし、白熱灯の電球も大手メーカーはそのうち生産を終了して、LED電球に変えていくようです。どこの店主も電球のストックを積み上げているのでしょうか。





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 Hank Jones氏が亡くなられました。私は、50〜60年代のジャズジャイアンツやハンク・ジョーンズ氏の時代と共に生きて来た年代ではないので、偉大さというのを現実感を伴って理解できません。

 追悼盤ということで、Basieでのライヴ録音のCDとLPが発売されました。ガラスCD一枚五万圓也を買うことができなかった労働者階級の私は、ようやく手に入れることができました。(^_^;)しかし、レコードプレーヤーを持ってもいないのに、なぜかLPまで欲しくなってしまうから困ります。一番安いレコードプレーヤーなら壱万圓以内で買えるので、LPを聴くために買ってしまおうかと考えてしまいます。これがオーディオの楽しさであり恐ろしさです。


(Jam at Basie featuring Hank Jones)

 そして、私も以前ハンクジョーンズ氏のライブではないのですが、ベイシーでのライブを楽しんだことがあります。なので、そのときの記憶が、このディスクを聴いていると蘇ってくるのです。ライヴハウスの情景、熱気、空間、そういったものが、勝手に脳内に音の情報として補完されるのでしょう。それとも、みんなそういうものがこのディスクに入っているのか。記憶があり、先入観のある私には、もう分かりませんが、とても懐かしい感じがしました。LPをどこかで一度聴いてみたいと思っています。


(THE GREATE JAZZ TRIO/Hank Jones Last Recording)

 そして、ハンクジョーンズ氏最後のレコーディングアルバムです。私はSACDのディスクを手に入れました。ハンクジョーンズ氏のまるで遺影のような、深く貫禄のある写真がジャケットになっています。モノクロームの実に味のあるジャケット写真です。私もこのように歳をとりたいものですが、無理でしょう。

 曲はジャケットに反して、重苦しい雰囲気や暗さなど、微塵もないように思えます。そしてハンクジョーンズ氏の演奏が、全面に押し出てくるような感じは皆無です。あくまでも調和したジャズに聞こえます。ジャズは演奏者の個性と主張のぶつけ合いというようなディスクを好んで聴く私には、Great Jazz Trioの作品は少々物足りなく感じていました。しかし、他の演奏者との調和、曲を美しく完成させていくハンクジョーンズ氏というのが感じられました。

 今更ながら、昔手に入れていたGreat Jazz TrioのSACDディスクを頻繁に聴き直して、今更その良さを味わっています。自分の好みも変化していくようです。こういう風に、良さに気付かずに倉庫にしまったままにして聴かずにいるCDがあるかと思うと、なんとも勿体ない気がします。聞き込んでいって、そして自分の好みが変わって、愛聴盤になるディスク、そういったものを倉庫から引っ張りだして来なければならないと思いました。

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(2011年01月21日)

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