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7.フォステクス(Fostex)NF-1A用ウーハーユニットの測定


 フォステクスのユニットが結構な種類たまってきたので、いろいろ測定してみることにしました。早くスピーカーにしてユニットを生かせてやらないとかわいそうです。しかし、作る時間が限られているのと、私の無計画ぶりでユニットが減る傾向にないのが残念なところです。(笑)

フォステクス(Fostex)NF-1A用ウーハーユニットの測定





 フォステクスのパワードモニタースピーカーNF-1A用のウーハーユニットです。まず外観上、独特の黄色いコーン紙と複雑なHP(Hyper Paraboloidal Diaphragm)形状のカタチに目をひかれます。黄色いコーン紙をよく見ると、金属の繊維や黒色カーボン繊維などが混じっているのが見えます。いろいろな素材を混合して、ヤング率と減衰比という通常相反する性能を持たせたコーン紙だそうです。





 最近の黒色のHR(Hyper Radial)型振動板とは、五角形の結ぶ線が直線か曲線かの違いなのですが、FEM解析すると、どのような違いが見られるのでしょうか。同社のホームページなどに、もう少し技術的な解説を載せて欲しいところです。

(Fostex NF-1 White Paper より参考図)



 この参考図を見る限りでは、同社がミッドレンジ化をしているマグネシウムよりも、伝達速度、内部損失共に、このHPコーンの複合素材の方が優れているようです。他の表に載っている図をみると、伝達速度に限っては、ダイアモンド、ベリリウム、ボロン、カーボンセラミックなどが優れた数値を示すようです。

 しかし、こうしたハイテク素材は、かつての日本の家電メーカーの素材開発競争で出尽くしており、その結果として結局今現在、アルミや紙といった普通の素材を使っていると思われるドームツイーターや、ウーハーがハイエンドと呼ばれるスピーカーの多くに採用されているのはなぜでしょう。物理特性を優秀にしても、聴感上好ましい結果が得られないのか。それともただコストの関係なのでしょうか。

 4個買い求めたので、4個ともインピーダンスを測定してみました。結果は下記[図1]〜[図8]のとおりです。ウーハーにしては、高域に向かって、インピーダンスの上昇もさほどなく、高剛性のHP形状のコーン紙やタンジェンシャルエッジもあってか、インピーダンス曲線からは明確なグリッチ(glicth)は認められませんでした。このウーハーのインピーダンスは、[図5]〜[図8]のdB表示から換算して、foで約51(ohm)、20(kHz)で約16(ohm)となります。

<計算過程>
[図5]〜[図8]より,20kHzにおけるインピーダンスをX(ohm),インピーダンスの上昇を6(dB)とすると,

20×log(X÷8)=6
log(X÷8)=6÷20
10^(6÷20)=X÷8
∴X=15.9≒16(ohm)

 同様にしてfo付近のインピーダンスも求められます。MySpeakerやFostexのインピーダンス曲線の縦軸の目盛は大ざっぱなので、正確に知るには多少計算しないとなりません。しかし今回、対数計算という高校生で習う基本的なことも忘れていました。(笑)

 ※ただし、MySpeakerはインピーダンスの公称値を基準にインピーダンス曲線を割り出しているので、より正確に測定するには、既知の純抵抗にインピーダンス測定中に切り替えるなどして、スピーカーの正確な最低インピーダンスを知る必要があります。

 パッシブ型のモニタースピーカーNF-1に使われているウーハーは、下記参考図のWhite Paperのインピーダンス曲線から、foがだいたい50〜55(Hz)程度であることが読み取れます。(バスレフの山が二つできるインピーダンス曲線で山の高さが同じ場合はfo=Fb,周波数の高い方の山が高い場合はfo>fb,周波数の低い山の方が高い場合はfo<fb,となります.fb=バスレフポートの共振周波数)今回の測定ではそれよりも若干高いfoの値となりました。パワードとパッシブ型で、それぞれウーハーの仕様を変えている可能性もありますが、同じ可能性もあります。

(Fostex NF-1 White Paper より参考図)


 3時間ほどXLOバーインCDのエージングソースを、大音量で再生させてから、インピーダンス測定とF特性の測定を行っています。あまりの大音量でしたが、2個ずつ互いを逆相接続にして多少音波を打ち消したのと、庭に出て電動工具を使っていたので何とか耐えられました。都会の一般的な家屋でこんなことをしていたら確実に苦情が来る音量です。ユニットが破壊しないかどうか注意しながら徐々にアンプのボリュームを上げました。ベコベコと互い違いにコーン紙が前後する様は、見ていて異様なものでした。


(エージング中のユニット、細い板を敷いているのはボイスコイルの背圧穴を塞がないため。)

[インピーダンス測定に使用した機器]
測定ソフト:MySpeaker
ユニット駆動アンプ:KENWOOD A-1001
サウンドカード:ONKYO SE150PCI

[図1]


[図2]


[図3]


[図4]


[図5]


[図6]


[図7]


[図8]


 インピーダンス曲線をみてくると、個体ごとのバラツキが多少あるようですが、foはだいたい65(Hz)くらいになると思います。Qも低くなく、バスレフ型スピーカーに最適なユニットのようです。

 続いて、50cm×50cmの段ボールのバッフルにユニットを取り付け、簡易的にサインスープでF特性を測定してみました。居間、寝室、仏間をさえぎるふすまと戸板を開け放して30畳ほどの広さの空間で測定しました。部屋の特性は、聴感上非常にデッドで低音のこもりや高域の反射は最小限に抑えられていると思います。結果は下記[図9]のとおりです。マイクとユニットの距離は20cmとしました。

[使用測定機器]
測定ソフト:MySpeaker
アンプ:CEC AMP71
サウンドカード:ONKYO SE150PCI
マイク:べリンガー ECM8000
マイクプリアンプ:べリンガー MIC100

[図9]


 F特性の結果、5(kHz) 10(kHz) 15(kHz)の周辺にディップが見て取れますが、それ以外は非常にフラットな特性で、高域まで良く伸びています。ディップはマイクの軸とユニットの軸が合っていなかった可能性があるので、今度追試してみたいと思います。ユニットを裸の状態でソースを聴いた限りでは、かなり高域まで出ていると感じます。

 そして、追試の結果しだいですが、デップが消えるとすれば、非常にワイドレンジなウーハー、ほとんどフルレンジスピーカーと言ってもよいユニットだと思います。パッシブ型のモニタースピーカーNF-1は10(kHz)という高域でツイーターとクロスさせています。(下記参考図参照)これは推測ですが、NF-1A用のウーハーもNF-1のウーハーと仕様がほぼ同じなのではないでしょうか。しかし、NF-1Aのクロスオーバー周波数は5(kHz)となっており、パッシブ型のNF-1とは異なっています。

 裸でソースを鳴らして聴いてみた感触や、測定した結果は良好でした。このHPやHRといったコーン紙形状のウーハーやフルレンジを、ぜひ同社の単品販売しているFEシリーズやFWシリーズにも流用して欲しいものです。

(Fostex NF-1 White Paper より参考図)


(2008年11月11日)

T/Sパラメーターの算定

 上記[図1]から[図4]より、NF-1A用ウーハーのQts Qms Qesの値とその平均値は、下記[表1]の通りになります。個人的にかなりバラツキがあるように思えます。しかしスピーカーのユニットの特性がどの程度のバラツキで生産管理されているのか分からないので、これが許容されるバラツキなのかどうか判断できません。

 ユニットに限らず工業製品からあらゆる製品まで程度の差こそあれ、必ずバラツキはあるので、同じ製品であってもアタリ、ハズレの製品や組み合わせは出てくるのだと思います。私は何個も同じ製品を買って、選別することはできないので、なるべく特性の揃ったペアをつかみたいものです。

[表1]


 Myspeakerから、簡易的にQts Qms QesとMms(=mo)が求められたので、計算式に入れて、Vasを求めます。他にもT/Sパラメーターには色々な数値がありますが、最低限Qts Qms Qes Mms Vasがあれば、バスレフや密閉型のスピーカーの設計は出来るようです。

(2009年06月06日)

振動系質量Mmsの測定とVasの計算

 Myspeakerには、振動系質量Mms(=mo)が不明なユニットに、質量を付加することで算出することができます。そこでNF-1A用ウーハーの振動計質量を求めてみることにしました。

 付加質量に1円玉を使い、振動板に両面テープで貼り付けてインピーダンスカーブからFs(=fo)を求めて算出します。HP振動板で1円玉を貼り付けるのに適当な場所が無く難儀しました。貼り付け面積の小さい円柱状の重りなどを確保しておいた方が良かったです。



 強力な接着力の両面テープを使い、1円玉を振動板から剥がせなくなったり、剥がしても跡が残ってしまわないように気を付けました。しかし紙の振動板に、かつ両面テープの質量が軽くて弾性の小さいモノとなるとそう無いので、多少繊維が剥がれるのは仕方ないと2つのユニットに1円玉を貼り付けて、インピーダンス測定を行いました。

 普通のインピーダンス測定が[図10]、一円玉5枚を付加して測定したインピーダンス特性が[図11]です。当たり前ですが、ユニットの振動系に質量が付加されたことにより、Fs(=fo)が下がっています。

[図10]


[図11]


 インピーダンス測定から、フリーエアと付加質量を加えたときのFs(=fo)、付加質量をMyspeakerの振動系質量計算ツールに入力するとMmsが算出されました。2つのユニットを計った平均が以下のとおりです。

Mms=12.3(g)

 Vasを求めるには下記[式1]の数式を使います。M質量 L長さ S時間 の次元の単位を、それぞれそろえて計算するように気をつけます。

P:空気の密度
C:音速
Sd:振動板面積
fs:ユニットの最低共振周波数
Mms:ユニットの振動系質量

[式1]


 空気の密度Pと音速Cは、気温や気圧によって変化しますが、ここでは標準的な値としてP=1.18(g/cm3)
、C=345(m/s)の値を使いました。計算の結果は下記[表2]のとおりです。

[表2]


 ということで、NF-1AのwooferユニットのVasは算出できました。4個測定したうち、3番は他の3つのユニットと比べると、やや値が離れているので、この3番の値を使わなければ、Vasは7.3(Liter)くらいに計算されます。というこどで、

Vas=7.3〜8.2(Liter)

 くらいになると思います。Myspeakerはユニットの直流抵抗を、ユニットの公称インピーダンスの0.8倍としてQts Qms Qesを算出しています。試しに、デジタルテスターで直流抵抗を4個のユニットについて計ってみると、平均の直流抵抗Re=6.2(ohm)でした。公称インピーダンスの8(ohm)×0.8=6.4(ohm)で若干は異なりますが、十分エンクロージャーを設計するときの参考になると思います。

(2009年07月07日)

WINISD ONLINEによるエンクロージャーの設計他

 WINISD ONLINEで、簡易的にエンクロージャーの設計ができるので、NF-1A用wooferの求めたパラメーターを入力して計算しました。WINISDのソフトを使えば、群遅延特性など、さらに細かい設計が出来るのですが、Myspeakerのソフトで求められるパラメーターだけでは、設計するのに不十分なのでISD ONLINEを使いました。結果が下記[表3]のとおりです。

[表3]


 表のとおり、Vas Qts Fs(=Fo)の3つのパラメーターだけでISD ONLINEによる密閉型とバスレフ型エンクロージャーの最適解が出てきます。密閉型はVb=7.01(Liter) Qtc=0.7、バスレフ型はVb=14.6(Liter) Fb=55(Hz)となりました。


<今回NF-1Aのウーハーを測定してみて感じたことを書いてみます。>

 Fostexから単品発売されていたウーハーのFW168HP、FW168HRの振動系質量Mmsより軽量だったのは意外でした。また、NF-1Aはパワードタイプのスピーカーユニットですが、素性を見る限り、NF-1に使われているユニットと同じ仕様のように思います。高域がウーハーにしては異例の10kHz以上まで伸びているのはほとんどフルレンジです。

 また、磁石の大きさは単品販売されているFWの16cmシリーズのそれより小さいのですが、Mmsが小さいために能率は同等か高いと予想されます。パッシブタイプのNF-1の能率は89dB/m/Wなので、NF-1Aのウーハーが同じ仕様であれば、つじつまが合いそうです。さらに、NF-1の低域インピーダンス曲線の2つの山から、ユニットの最低共振周波数Fs(Fs=fo)はバスレフの共鳴周波数Fb=60(Hz)よりやや高めと推測できるので、おおよそ70(Hz)程度となり、NF-1Aのユニットの測定結果と重なります。

 インピーダンス二つの山の間の谷がほぼ、バスレフの共鳴周波数Fbです。2つ山の高さが同じであれば、Fs=Fbとなります。低域側の山が低い場合にはFs>Fb、高域側の山が低い場合にはFs<Fbとなります。

 ユニットのQが0.5付近ということで、バスレフだけでなく、密閉型でも使えそうなユニットです。

 ユニットを取り付けるネジ穴がM4ネジ用であり、4穴しかありません。単品のFWシリーズの16cmユニットと比べ頼りなく感じます。しかし、逆にFostexのユニットの取り付け穴数が多く、ネジ径太いために、本来はこれで十分なのかもしれません。同様にユニットフレームも単品のFWシリーズより細身です。

(Fostex NF-1 White Paper より参考図)


 せっかく4つもユニットを買ってしまったので、このユニットを使って2wayの密閉型スピーカーを作ることを予定しています。もう1つユニットを買って5本スピーカーを作り、SACDのマルチチャンネルを楽しんでみたいのですが、再生できるプレーヤーもアンプも持っていませんし、予算もかかるので、とりあえず2chで高品位な2wayが自作できるかどうかを試してみたいと思います。

(2009年07月07日)

参考文献・引用文献
Fostex NF-1 Technical White Paper

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