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ジャズ喫茶ハーフノート1
(Half Note COFFEE & JAZZ)


岩手県奥州市胆沢区にあるジャズ喫茶ハーフノート(Half Note)。JBLの名機パラゴン(Palagon) DD44000が、木の響き豊かに、広い空間で朗々と鳴っています。ここでかかるレコードと音に衝撃を受けてしまった私は、また通うべきジャズ喫茶が増えてしまい、嬉しい悲鳴を上げています。

第1回目訪問(2008年6月下旬)

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

 岩手県奥州市胆沢区にあるジャズ喫茶ハーフノート(Half Note)へ初めて行きました。国道4号から、田舎の県道を走り、迷わずにハーフノートへ来ることが出来ました。県道を挟んで向かいには、水沢農業高校があります。駐車場に車を止め、木の造りの建物に近づくと、もういい音が中から聴こえてくるのでした。もうこれだけで、中へ入ってもいいジャズが流れていると確信みたいなものを持てました。

 扉を2つ開け店内へ入ると、天井は高く、内装は木で統一されており、非常に響きの美しい建物です。そうして、耳の高さに合わせるように、専用の木製のデッキに乗せられたJBL DD44000は、建物と完全に調和が取れていて美しいと感じました。そして、その古くも美しい外観のスピーカーから流れてくる音も美しいのです。美しさと同様にジャズの驚喜、狂気、そして蠢きのような表現が出てくるです。何とも言えない気持ちになりました。

 現代のハイエンドと呼ばれる高額なスピーカー。そして、私自身、出てくる音の物理特性よりも、見た目を優先させているのだろうと、勝手に考え、スピーカーというよりも骨董品とか美術品に近いものと思っていたDD44000。そしてこのDD44000、おおよそ現代の物理特性を重視しているはずのスピーカーの流行や理論から、外れた設計だと勝手に考えていた私。このスピーカーから、こんな音楽がジャズが聴けるなんて、ものすごい興奮と嬉しさと同時に、とても複雑な気持ちを抱きました。スピーカーってこのDD44000が登場した昔から、進歩しているの?と。

 そしてつくづく、スピーカーは使いこなしと、その置かれた空間で、違うスピーカーと思えるほど、出てくる音は違うと感じました。今ちょうど、西日が山の向こうに沈んで、パラゴンの陰影がより濃くなっています。あまりの美しさにため息を付ながら、この文章を書いています。

 先客が帰り、この広いジャズ喫茶に客は私一人となっています。店主は私一人のために、レコードをかけてくれます。そして、私はパラゴンの前の中央の椅子に座っています。得も言われぬジャズが流れて来ます。なんとかけがえのない贅沢な時間を過ごしているのだろうと思います。

 このジャズ喫茶に通わなくてはならない。そう思いました。スピーカー作り。仕事。他にも色々とすべき事はたくさんあります。時間は容赦なく過ぎていきます。そして私の身体は一つしかありません。時間が足りない。やりたいことがたくさんある。本当はお金も無い。しかし、こういう状況は幸せです。何もしたいことが無い程、つまらない人生などないでしょうから。

 Max Roach・Connie Crothers/Swishのレコードがかかります。混沌として、FusionかRockの様なレコードです。美しいスピーカーと出会え、自分の知らなかったレコードに出会える。こういうジャズを聴きたかったんだ。と、声を大にして叫びたい程でした。

Max Roach・Connie Crothers/Swish
(Max Roach ・ Conie Crothers/Swish 注:LPのジャケットとはデザインが違います)

 このレコードを聴いて、私の頭に思い浮かんだのはRadiohead/KID Aです。KID Aのアルバムの出る何年も前に、ジャズはとうにこういう表現をしていたのか、と愕然としました。1982年のアルバムです。音楽はロックが最先端をいっていたと思っていただけに、本当に衝撃を受けました。ジャズの方がずっと先に進んでいたではないかと。こんなレコードと出会えるなんて、本当に嬉しい衝撃です。ジャズで言えば、John Coltrane/Live at the Village Vangured、Live at Birdland、Eric Dolphy/Out To Lunch、そしてロックで言えば、Radiohead/KID A、Sigur Ros/( )、Autechre/LP5などに出会った時のような衝撃です。こういう全身を震わせる程の音楽との出会いは私にとって滅多に無い。それだけに本当に嬉しいのです。

Radiohead / KID A
(Radiohead / KID A)

Sigur Ros / ( )
(Sigur Ros / ( ))

Autechre / LP5
(Autechre / LP5)

John Coltrane / Live at the Village Vangurd
(John Coltrane / Live at the Village Vangurd)

John Coltrane / Live at Birdland
(John Coltrane / Live at Birdland)

Eric Dolphy / Out To Lunch
(Eric Dolphy / Out To Lunch)

 ケーキセットにコーヒーかお茶がつき、そしてこのジャズを堪能できて\750。来るまでの道のりは遠いが安い。遠くてもここに辿り着いてジャズを聴くことに大きな価値があると私は思いました。Half NoteのDD44000と、今日このレコードに出会えたことに感謝し、店を出ました。

 帰りの車で、いつもは音楽をかけながら運転するのですが、この日は静かに夜の国道4号線を走って帰りました。

(2008年07月01日)

第2回目訪問(2008年7月中旬)

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

 7月の中旬、奥州市胆沢にあるジャズ喫茶ハーフノート(Half Note)へ行きました。前回の訪問から2週間ぶりです。私が店内に入ったときには誰もいませんでしたが、すぐに2組のカップルが入ってきて席に着きました。やはり一人でジャズを聴くのは寂しいものがあります。前回と同じ頃、ちょうど日が沈む時間に来たので、店内は薄暗くなっています。ハーフノートでは必要最小限の照明しか使わないようなので、目が慣れるまでに時間がかかります。

 私が店内に入ってすぐの時には、CDがかかっていました。曖昧さの少ない低温。コリッとして硬質感のある音は、低域に限って言えばLPレコードよりも良いくらいに感じます。このジャズ喫茶から道路をはさんで向こうには、水沢農業高校の広いグランドらしき敷地が見えます。土の地面ではなく、一面に芝か雑草が生えています。あれならば、砂ぼこりに悩むことなく部活動を送れるに違いありません。

 白熱灯のランプが隣りの若いカップルを照らしています。ここはおしゃべりをして過ごすのには、少々ストイックな音量のジャズが流れるジャズ喫茶です。何も語らず。何を想っているのでしょうか。

 JBL DD44000 Paragonは美しい。こうして長い年月が経っても色褪せることなく、次の世代まで伝えられるデザインをすることは、どれほど難しいことでしょう。CDが終わり、LPレコードがかかります。やはり、お客が来るとレコードなのでしょうか。Milt Jacksonのバイブが聴こえます。耳にきつい高域ではありません。実に耳当たりの良い音です。中域も低域も、ここで鳴っているジャズそのものが最高に良い感じです。

 会話を楽しむお客は、カウンター前の、スピーカーから遠い席へ座り、私のようなジャズのみ聴きたい者は、スピーカーの正面に座ります。広い店内だから可能なことです。このジャズ喫茶ハーフノート(Half Note)の周辺は本当にのどかな田園地帯です。だいたい東北本線の陸中折居駅から、道なりに6kmくらいで着くでしょうか。健脚の持ち主ならば、駅から徒歩一時間といったところです。

 生のベースより生々しいベースの音が聴こえます。何とも楽しいことです。コントラバスベースをどんなに強くかきむしっても、こんな音量はでないでしょう。こんな楽しみがあるのもレコード演奏だと思います。「原音再生?何ですかそれは?」と、言ってしまいたい程楽しいジャズでした。

 隣りの席の若いカップルは何も語らず笑顔で見つめ合っています。いいですね。こういう光景。ジャズ喫茶ではおおよそ見かけたことの無い光景です。

 ところでパラゴンというこの愛称は、どこから付いたのでしょう。○○ゴンでは、まるで子供の頃に見たウルトラマンの怪獣の名前の様です。(笑)Paragonという愛称と、この流麗な曲線を描くスピーカーとは、私の感覚からすると合っていないように思えました。

 白熱灯の明かりが、テーブルを照らします。どうしてこんなに優しい光なんだろうと思います。色だけ似せた蛍光灯では決して出ない明かり。この白熱灯も、そのうち省エネという理由で、消えていくのでしょう。すると蛍光灯を使いたくないオーディオマニアは、灯りに何を使えばいいのか。LEDへ行くしかないのでしょうか。果たしてLEDでこういう優しい光が出るのか。LEDは直流しか流せません。交流を直流に変換してやらなければなりません。いけない。ジャズ喫茶でまた余計な事を考えてしまいました。

 私もSACD盤で愛聴しているMiles Davis / Sketches of Spein のレコードがかかります。このレコードはベイシーでも聴いたのを覚えています。ビックバンドを従えて、Miles Davisがかっこよく、渋くTrumpetを演奏しています。次ぎに、ビックバンドのライヴ盤が大音量でかかるも、全く破綻しない音を聴かせてくれます。耳に痛さも感じません。気持ちの良いビックバンドなのです。目を閉じて、ビックバンドを楽しみました。自然と身体が動いてしまい、演奏者のリズムに私は酔いしれてしまいました。

 ビッグバンドの次はNina Simonの歌声です。女性にしては太い声で(ジャズでは、今の細い優しい声のジャズヴォーカルの方が例外的なのでしょう。)、なんとなく懐かしいメロディの曲を歌っています。

 こんな事を思いました。アマチュアカメラマンが、霊峰の山頂から御来光を撮るため、登山者となり、さらに重い三脚とカメラ、レンズの機材を背負って山を登るのです。そしてベストショットが撮れれば良いのですが、そう簡単にお天道様は、最高の天候を易々とは作ってくれません。陽が雲に隠れる年もあれば、悪天候で何も見えないときすらあるわけです。しかし、最高の一瞬を撮りたいカメラマンは、毎年山に登るのです。天候が悪く、シャッターが切れなければ、また来年。Next Year One More Time です。ほんの一瞬の最高の光景を切り取るためにカメラマンは山に登るのです。これに、オーディオも似ていると思いました。ほんのひととき、最高の音楽を聴くために、その状況が用意されているかどうかわからない山に向かって、手間と暇とお金を使って、登るのです。しかもこれは仕事では無い、純粋な”遊び”です。決して自分の信条を曲げていくことができません。

 天井の羽が回って、かすかに涼しい風が届きます。この夜もジャズを聴けて最高でした。

(2008年07月21日)

第3回目訪問(2008年7月下旬)

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

 奥州市胆沢にあるジャズ喫茶ハーフノート(Half Note)へ行きました。着いたのは、今までと同じ、ちょうど日が沈む頃です。レコードが終わると、静寂に戻り、外の虫の音が聴こえます。遮音するのではなく、適度に音が抜けていくのが良いのだろうと思いました。

 エレキギターのジャズがかかります。良いリズムです。リズム感。この感覚がまず違います。私はアマチュアバンドの録音をすることがあります。しかし、いかんせんアマチュアです。レコードとして残り、ジャズ喫茶の店主に愛され、ターンテーブルの上に乗せられるレコードの演奏者のプロとは、技術、リズム、すべてにおいて比較になりません。当然です。アマチュアがどうがんばっても到達できない極致にいて、それを生業とするのがプロなのです。

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

 しかし、音そのものを聴いても、昔のレコードの方が良いように思えるのです。何十年前のプロ用の録音機器。そして今のメモリーレコーダー。何十年の時を経ても、尚昔の機器にはかなわないのでしょうか。プロ用の最新鋭の録音機器ならば、軽く昔のそれを凌駕するのでしょうか。

 昔の、業務用の真空管を使った巨大な電子計算機は、今の1,000円に満たない、民生用の電卓や、格安のPCの表計算ソフトに太刀打ちできません。しかし、音楽は録音機器も、それを収める記録媒体もたいして進歩していないように思えます。進歩したのは、小さくなったことと、使い勝手が良くなったことだけでしょうか。進歩があったのなら、その成果の限界までソフトに詰め込んで、聴き手に届けて欲しいと、いつも強く思っています。

 日も沈み、完全に暗くなると、虫の音色も変わります。レコードが終わり、次のレコードまでの静寂の時間には、壁に立てかけてあるゼンマイ式の時計の「コチコチ」という時を刻む音が聴こえます。祖父母の家へ行くと、巨大な壁時計があり、「コチコチ」と鳴りながら、ずっと時を刻み続けるのを思い出します。そしてゼンマイを巻く作業と、時間を合わせる作業が必要なのですが、今の電池で動くクオーツ時計には無い何かを感じさせてくれます。

 JBL DD44000 Paragon パラゴンは実に多彩な表情を見せてくれます。ピアノの音色など、角が丸まった音かと思えば、ドラムは迫真の音が、スパン、スパンと軽く飛んできます。面で押し寄せてくるような音は、ジャズにうってつけのスピーカーだと思います。ではクラシックは、ロックは?などと考えてみても、ジャズ喫茶なのですから、想像を巡らせてみるしかありません。きっと悪い音はしないと思います。

 何とも切ない感じのメロディと、悲しい旋律のバラードがかかります。それで終われば普通の曲なのですが、それで終わらない、先が読めないのがジャズの面白いところです。突如ドラムが入り、急にテンポが上がり、激しいリズムと旋律が駆けめぐるジャズに変化していきます。このテナーサックスの音が絶品。

 ジャズと音そのものの力を身体で受け止められるのが嬉しいのです。先ほどはピアノの角が丸いと書きましたが、今聴いているレコードからは鮮烈なピアノの音色が聴こえます。レコードに込められた演奏者と録音技師の想い、装置を使いこなす人によって、いかような表現もできるスピーカーなのではないかと思いました。

 今日も、ジャズを聴けて満足でした。遠い家路への道のりは気にならなくなります。

(2008年09月23日)

第4回目訪問(2008年8月上旬)

 今日も、日没頃にジャズ喫茶ハーフノートへ来ました。店内に入るとCDがかかっていました。ラテン系のギターサウンドです。ノイズレベルが小さく低域の輪郭が明瞭なところがCDの良いところだと思っています。

 壁を見ると、Count Basie Orchestra / Basie is Back のジャケットが飾られています。ジャズ喫茶エルビン、ベイシー、ハーフノートと、3軒で飾られているのですが、私は未だにそのレコードを聴くことができないのが残念でなりません。私は、ジャズ喫茶の音や内装、雰囲気、香りに加え、選曲も店主の信条であると考えていますので、店主の選曲を全面的に信頼しています。そのうち、店主と波長が合えばレコードを聴くことができるでしょう。

 今夜は少々蒸し暑いです。夏でも東北の朝夕は涼しいのが常なのですが、少し汗ばんできます。そして、レコードは蒸し暑さとは正反対のクールなジャズといいたいところですが、パラゴンから聴こえてくるのは、ぶ厚く熱いジャズです。この熱で、今夜の蒸し暑さを吹き飛ばそうという感じです。

 ピアノと女性ボーカルがかかります。静かなジャズです。女性とはいえ、低音もふくよかで、若干ホーンにマスクされるような気がするものの、中高域は天井知らずに伸び上がる声が聴こえます。やはり、人間の声は普段、一番聴き慣れているだけに、オーディオにとって一番厳しいソースであると思います。

 しかし、そんな小さな事はどうでも良いではないか。ジャズを熱く楽しく、体感させてくれるのです。十割を目指そうと、とてつもない苦労というか、コチラを建てればアチラが立たずで、返って曖昧になるのは明らかです。オーディオは欠点を消していくのでは無く、長所を伸ばす工夫をした方が楽しいと思っています。しかし、ベイシーの菅原店主がおっしゃる八割バッターもとてつもなく難しいのです。私のオーディオはとりあえず、三割バッターを目指そうかな、などと思いました。

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

(2008年09月23日)

第5回目訪問(2008年8月下旬)

ジャズ喫茶ハーフノート Coffee & Jazz Half Note
(CONTAX T3)

 奥州市丹沢区にあるジャズ喫茶ハーフノートへ来て、久しぶりにJBL DD44000に出合いました。外は雨が降っていて、8月だというのに肌寒い日でした。いつも座っていた中央の席に先客がいたので、他の席へ座りました。

 そうすると、先に座っていたお客の方から、「真ん中で聴きなよ。」と、声をかけていただいたので、有り難く相席させていただきました。いつも夕刻にこの店に来ているのですが、だんだん日が短くなっているのが感じられます。駐車場にはBMWの高級車が停まっていました。

 しばらくすると、お客が帰ってしまい、私一人のために店主はレコードをかけて下さいます。この日はジャズ喫茶ベイシーでジャズを楽しんでから、さらにハーフノートでジャズを楽しもうという魂胆でした。本当はもっと明るい時間に来て、陽の光に照らされるパラゴンの色や、お店の内装を見たいのですが、いつもここへ来るのは日暮れ時になってしまっています。

 暗くなると、目からの情報が少なくなりジャズへの集中力が上がっていきます。そして音楽は、耳で聴くのではなく脳で聴くのだと感じています。脳には、他に視覚や触覚、嗅覚、記憶と、あらゆる感覚と感情が支配しており、私自身耳だけで聴くことはほとんど不可能に近いことで、いつも脳で聴いていると感じます。なので、客観的に良い音と判断できる耳を私は持っていません。それはいつも感じていることです。

 また、ジャズ喫茶でオーディオのコトを考えるという悪い癖が出てしまいました。ジャズを無心で聴く。音に込められた狂気や狂喜を聴く。こちらの脳に想像力と集中力がないと、なかなかそういうレコードに出会えません。身を震わす程のジャズに、いつも出会いたいと夢見ています。

(2008年09月21日)

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