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BASIEの音3

ジャズ喫茶で、言わずと知れた、岩手県一関市にあるベイシー。全国から、新幹線や飛行機に乗ってまでも、ベイシーの音を、ジャズを聴きに行く人も多いという、まさに言ってみればジャズ喫茶の聖地。そのベイシーへの訪問記を、最初は「徒然雑記・散歩」に気楽に書こうと思っていたのですが、音を聴いて、これは気楽に書ける音ではないし、一回行っただけでは掴みきれない懐の深さというか、奥の深さを感じたので、別ページで書いてみることにしました。

第11回目訪問(2007年4月下旬)

 初めて、ベイシーへ友人を連れて入ります。初めてベイシーに来た友人二人を優先させるために、私はスピーカーを背に座ります。振り返らないと全くスピーカーが見えない状況です。やはり、座る位置に寄って、音はかなり違います。スピーカーを背にしていると、低域が尋常じゃなく聴こえます。元々ベイシーの低域は尋常ではないので、ベースの旋律、ドラムのリズムが体中に振動として伝わってきます。

 久しぶりにベイシーに来ましたが、かかるレコードは初めて聴くモノばかりで、とても新鮮な感じです。そしてピアノのソロが始まりますが、低域から高域まで絶妙なバランスに聴こえます。スピーカーを背にしていても、良い音は良いし、良いジャズは良いです。ピアノのタッチと強さが最高です。この輝くような高域はフルレンジやソフトドームツイーターでは聴けないと思いました。特にピアノの高音部のfffの破綻のなさと、同様に低域の良さが素晴らしいです。とにかく、レコードが、新しく聴くものばかりなのでとてもすがすがしい気持ちです。

 いつものJBLのシステムを見ず、後ろの倉庫にしまわれているユニットが目に入ります。あのユニットは何だろう。と考えている間にも、美しく、力強く、生命力にあふれたピアノソロが素晴らしい音で鳴っています。この席からだとジャケットの文字が読めません。けれども遠目でも美しいジャケットです。

 HERBIE HANCOCK QUARTETこのマリンバは、木の音が、金属の筒の共鳴を伴って鳴っているのが手に取るように分かり、ピアノはハンマーが金属の弦を強く叩いて音が鳴るというのが分かります。分析的に聴いても、解像度のある音です。これにまろやかさが加わって、ほとんど何の欠点も見あたらない音がここで聴けます。それでいて、無味乾燥な響きはなく、いつもと変わらず、いつまでも聴いていたい、という温かい音がここにあります。ほぼ白いこのレコードのジャケット。個人的に非常に好みの曲調です。混沌としていい音が混ざり合っていくのが、たまらなく気持ちいいです。きっと音と同じように、光りの色が混じりあってジャケットの色は「白」になったんだと思いました。

 2曲目は、打って変わって静かなピアノソロ。ランプを見上げると、東芝の40W球が見えます。この球で店の音が変わってしまうとは、店主の著書に書いてあることですが、まさかね。と思ってしまう私はまだまだ追い込みが足りない人間なんだなぁと思った次第です。しかし、自分の部屋の電気を蛍光灯から電球に替える訳にもいかないよなぁなどと思ってしまいます。まだまだオーディオにかける情熱が足りないと少し反省。

 今日は18時近くになっても、結構お客さんが居ます。ドン・フリードマンの知っている曲がかかります。自分のオーディオで聴く音と違うのは一聴して分かります。美しさ、儚さ、切なさが伝わって来ます。スピーカーを背にしていつもと違う風景を見ていると、いつもと違うことを考えます。そして、目の前には美女二人がおり、その二人はダンディズムの局地とも言えるこの音より、もっぱら店の内装や壁に書かれたサイン、そして婦人画報とう雑誌に目がいっている訳で。そして、特等席では、一人の女性が真剣にジャズと向かい合っており、自分はというと、相変わらずオーディオマニア的な分析的な聴き方と、ジャズファンとして心で聴きたいという葛藤でもがいている訳なのです。


(Circle Waltz/Don Friedman Trio)

 しかし、私の前でダンディズムより婦人画報に興味を抱いていた二人なのですが、そこにベイシーと菅野沖彦先生の記事を見つけて、私に見せてくれたのです。この記事を知るのも、そして桃井かおりまでベイシーの常連だったなんて、この美女二人と来なければ知らなかったはずなので、感謝です。やっぱり女性が居た方が音も華やかに聴こえるような気がします。まったく根拠のないことですけど。

 最後、ベイシーのテーマ音楽が流れてきたので、今日はこのレコードでお終いだな、と思った私は、レコードが終って店を出ようとすると、店主はサッチモのレコードをまたかけてくれたのです。そして、「このレコードも聴いていきなよ。」という声に促されて、また席へ戻りサッチモの名盤を聴いたのでした。そこで、菅原店主に、「この盤はビートルズの独走を止めた一枚なんだ。」という解説までしていただき、サッチモの力強くも優しい歌声も相まって、感動の気持ちでいっぱいになったのでした。

 この後、友人二人とベイシーを出て、近くの蔵のレストランで夕食をとり、とても充実した一日を過ごすことができました。韓国家庭料理のお店「トロント」は団体客で貸し切りでした。こんどはトロントにも行ってみたいものです。



(2007年07月07日)

第12回目訪問(2007年5月中旬)

 一関ジャズ喫茶ベイシーへ、重い1つ目の扉を開くと、いつもなら聴こえるジャズの音がしません。2つ目のドアを開くとお客さんは誰も居らず、店主と店員さんが2人で丸テーブルへ座っています。店主は準備中とおっしゃりましたが、ありがたいことに、私が来たので、営業を開始して下さいました。最初の曲はスピーカーとシステムの確認かならし運転のためでしょう。Art Pepper Meets The Rhythm Sectionがかかります。店主は、大きな自作JBLのシステムの前へ行って、ホーンやツイーターからの音を、耳で確認しています。何度来ても新鮮な音に感じます。

Art Pepper meets The Rhythm Section
(Art Pepper meets The Rhythm Section)

 続いてBIG BANDのレコードがかかります。あまりの圧倒的スケールに思わず涙が出そうになります。しかし、僕の斜め前の特等席では、店主がさもあたりまえのように、スピーカーを背にし、タバコを吸っています。店主が当たり前に聴いていても、その斜め前で私は思わず涙を流しそうになっているのです。できれば、店主の座る特等席の前の席が、スピーカーの中間の特等席になるわけですが、いつかそこへ座ってジャズを聴いてみたいと思いました。後ろの席にすわれば、ほぼスピーカーの真ん中で聴くことが出来ますが、そこだと、スピーカーから遠くなり、音もやや遠くなるきらいがあるように思うのです。菅原先生、一番良い席を指定席にしてしまうとは、たまにはそこも自由席にして下さい。と、心の中で思ったのでした。

RELAXIN' WITH THE MILES DAVIS QUINTET
(RELAXIN' WITH THE MILES DAVIS QUINTET)

 MILES DAVIS/RELAXIN' THE MILES DAVIS QUINTETのレコードがかかります。これも良く聴き知った、私の愛聴盤の一枚です。MILESの太い声が出てきたところで、違う、と分かります。とにかくMILESのトランペットの瑞々しいこと、私のオーディオではMILESのトランペットが枯れたような音になってしまうので、どうしたものかと悩んでしまいます。やはりジャズはジャズ喫茶で聴くのに限ります。聴き知った盤も、知らない盤も新鮮に集中して聴くことが出来ます。MILESが口笛を吹くところだけ聴いてもベイシーのシステムが尋常では無いことが分かります。凄い。あの高域まで一気に伸びきる口笛を吹くMILESはもっと凄いですけど。集中しているので、ベイシーへ来ると時間が経つのが早いです。

 MILES/Sketches of Spainのレコードがかかります。耳に馴染んだ曲ですが、アレンジが凄い。そして、Spainの燃えるような赤のジャケットが美しい。オーケストラのようなクラシックのような、ジャズです。燃えるような情熱的な曲なのに、どこか哀しげです。

 一聴して楽しく、ピアノは鮮やかな曲。これもベイシーで良くかかるレコードの一枚です。DUSKO GOYKOVICH/SOUL SECTION。暗さをみじんも感じさせないピアノ。弾むようなドラム。ひたすら一瞬を楽しんでいるようなサックス。2曲目は少し静かで哀しさを伝える曲調。蔵の外は、初夏を思わせる陽気で、田植機が水を張った水田の上を走っていたりしますが、蔵造りのベイシーの店内はひんやりしています。

Waltz for Debby/Bill Evans Trio
(Waltz for Debby/Bill Evans Trio)

 BILL EVANS/WALTZ FOR DEBBY。名盤中の名盤。部屋の空気が一変してしまいます。こういう音と空気を自分の手持ちのCDからも出してみたいと思いました。

 今日は、この後一関にもう一軒あるジャズ喫茶ROYCEへ行くので、2時間で切り上げてお店を出ました。

(2007年07月07日)

第13回目訪問(2007年5月下旬)

 一関ベイシーへ向かいますが、一関駅前でふと考えてしまいました。お昼は何にしようと、私のすきな蕎麦の店「ちょくりあん」とラーメン屋の「丸長ラーメン」は日曜日は休みなのです。きょうは休店なのでどうしたものかと、ホテルサンルート一関のランチがおいしそうなので、ホテルのランチとなりました。このホテルには、BASIEと関係する数々のミュージシャンが泊まったんだよな。と思うと何か感慨深いものがありました。そして空腹をみたしてから、歩いて目的地のBASIEへ向かいました。





 BASIEへ到着すると、ドアは開け放たれ、外からも店の中のジャズが聴こえます。きっと開店準備中なのでしょう。なので、近くを散歩しました。近くを流れる磐井川の橋の上からは、新緑の山々が川の向こうに見え、青空は澄みわたり、すがすがしいことこの上なしです。こんな天気の良いすがすがしい日に、暗い蔵の中へ入ってジャズを聴こうというのですから、なんとなく不健康の様な気もします。しかし、私の心はジャズを欲しているので仕方ありません。

 散歩途中、小さな小さな公園で、学生のカップルがお弁当を食べていたりします。なんとものどかで良い光景です。そして、辺りをぶらぶらしてBASIEへいくと営業を開始しておりました。ECHOES OF AN ERA/The Count Basie yearsのレコードがかかっています。知っている曲ですし、ドラムは生そのままの迫力。

 続いて、Sonny Rollins/TENOR MADNESSがかかります。これも私がよく聴き知った曲ですが、ここで聴くと本当にテナーサックスがマッドネスです。私の家ではこんな音はでません。さわやかなけだるいサックスになってしまうのです。でもベイシーで聴いても、私にはSonny Rollinsのサックスはどこか余裕が感じられるのです。題名はマッドネスなんですけどね。


(TENOR MADNESS/SONNY ROLLINS QUATET)

 The Arrival of Victor FELDMAN。超ハイテンポなベースとビブラフォン。まるでハードロックのような一曲目。こういうのに私は弱いのです。すぐに感動して心を持って行かれてしまいます。ただ、BASIEで凄いと思って買ったCDも、家のオーディオではその凄さが出なかったりして、結構難しいのです。ベイシーの低域は尋常ではないということは、何度も書いていることですが、この超高速で立ち上がり、立ち下がる、風のように軽く重い低域は、密閉のエンクロージャーと、ミッドとツイーターとの絶妙のつながりに負うところが、大きいのだと思いました。

 Miles Davis/Kind of Blue。昨日ジャズ喫茶ELVINで聴いた一枚です。不思議な得体の知れぬ曲調。難解でジャズ初心者の私には難しい一枚です。

 続いて、となりの特等席に座っていた方がリクエストした一枚、Art Pepper/Mordern Artがかかります。これも個人的にCDで持っていて良く聴き知った一枚なのですが、Pepperのサックスが天井まで駆け上ります。このレコードも私には難解で、Pepperがこのとき何を考え、どういう状況で演奏したのかが、このBASIEのJBLから放たれた音で、知りたいと思って、集中します。


(modern art/ART PEPPER QUARTET)

 帰り際、菅原店主に坂田明先生のLIVEのチケットを欲しい旨の話をしたら、「まだない。あした作る。」と即返答があり、その返答の早さにジャズの掛け合いみたいなモノを感じ、さすがだなと思いながら、私も「それでは、来週また来ます。」と言って店を出たのでした。

(2007年07月07日)

第14回目訪問(2007年5月下旬)

 今日は、一関で有名なそば屋「直利庵」で昼食を済ませてから、ベイシーへ向かうことにしました。それにしてもこの「直利庵」、午後2時を過ぎようとしているころなのに、店内はお客さんでいっぱいです。何とか席に座り、「おおざる」を注文しました。しばらく経って盛られたそばを見ると、昔を思い出します。このぐらいの盛りだったかと思い、そばつゆにそばを入れようとするのですが、なかなか入らないのが「直利庵」のそばです。ベイシー詣でをされる方には「天おおざる」がお勧めで、日曜日が定休日です。





 ということで直利庵のそばを食べて、ベイシーへ向かいました。ジャズ喫茶ベイシーの扉を開けると、聴き慣れた曲が聴こえます。Art Pepper meets The Rhythm Sectionのレコードがかかっています。お客さんは、土曜日だというのに自分一人です。やはり名盤と呼ばれるレコードは、よくかけられるようです。

Art Pepper meets The Rhythm Section
(Art Pepper meets The Rhythm Section)

 Art Pepperのサックスは、何度聴いても気持ちいいです。ドラムは適度な弾力を持った低域となって、こちらに飛んできます。きっとコーン紙に程よい制動をもたらす背圧がかかっているのでしょう。この音は密閉型の箱だから出てくる音であって、世の中のほとんどのバスレフスピーカーは、はたしてこういう低域の再現は可能なのだろうかと考えてしまいます。

 DUSKO GOYKOVICH/SOUL CONNECTIONのレコードがかかります。この一枚もベイシーでよく聴く一枚です。楽しさに満ちあふれたジャズで、暗さや影のような部分は感じられず、純粋にいい音のジャズだと思います。

 続いて、女性と男性ボーカルモノがかかります。音像は大きく、唯一私のシステムのスピーカーTD508がベイシーのシステムに勝るのが、音像の小ささと、その定位の正確さでしょうか。しかし、この男性のしゃがれた腹と喉から出てくる声は、到底8cmのフルレンジからは聴けない音であることも確かなのです。オーディオは難しい。

 次のレコードは大の大人が3人楽しそうに木馬に乗っているのが印象的なジャケットのジャズです。エレキギターが甘い音色を奏でておりました。

 Flight to Jordan/Duku Jordanのレコードがかかります。これもベイシーで良くかかるレコードです。間接音の中にふんわりと浮かぶ音像ではなく、明確な意志と存在感を持った主旋律が鳴っています。ドラム、ベース、ピアノが渾然一体となって、素晴らしい時が甦ったように思います。

 The arrival of Victor FELDMANのレコードは最高の一言。

 ところで、ジャズ喫茶ベイシーに通い続けている私ですが、いつになったらCount Basieの名盤達を聴けるのでしょうか。Basie is Back や April in Paris をベイシーのこのシステムで聴いてみたい。

(2007年07月07日)

第15回目訪問(2007年5月下旬)

 ベイシー訪問も15回目になりました。といっても何もありませんが。ということでいつものようにベイシーの扉を開けて店内へ入ります。すると、Sonny Rollins/TENOR MADNESSのレコードがかかっています。何となくベースが暴れ気味に聴こえます。店主の調子も絶好調なのか、ボリュームの目盛りも多分かなり上の方までいっていると思います。日毎に音が違うのがオーディオですが、確かにベイシーの音も音量から、低域から高域のバランスまで、結構変わるように感じます。


(TENOR MADNESS/SONNY ROLLINS QUATET)

 3枚目のレコードで気付きました。音量が大きすぎます。しかし、音量もここまで上げることができれば、アンプもスピーカーも本望だろう、などと考えます。何と暴力的な音量。シンバルのはじけるところで、自分の鼓膜まではじけてしまいそうで恐ろしい。しかも低音は暴力を通り越して、体を揺さぶってきます。内蔵が低音に揺すられているのです。恐るべしベイシーです。

 GENE HARRRIS AND THE PHILIP MORRIS SUPERBAND/LIVE AT TOWN HALLのレコードがかかります。店主はきっと健康で、ノリにノっているのでしょう。こんな音、心も体も頑強でなければ、聴き続けるのは無理だと思います。音は爆発したという表現が適当だと思われます。

 Tommy Falanagan/Confirmationのレコードがかかると、ようやくいつもの音量に戻った感じです。この一枚もベイシーではよくかかる一枚で、ジャケットの絵を覚えてしまいました。

 The Concert Sinatra/Sinatra シナトラをベイシーで聴けるとは思いもよりませんでした。シナトラのボーカルももちろん凄いのですが、バックのオーケストラの表現も絶品であり、ベイシーでクラシックのレコードを聴いたら、これもまた最高だろうと思わせる鳴り方です。

 STEAMIN' WITH THE MILES DAVIS QUINTET。ようやく落ち着いてJAZZを聴けると思ったら、もうお終いの時間です。マイルスのトランペットは、力を抜いているようでも、抑揚が付き、おもしろく、美しく、枯れていて、古い音色がするように思います。


(STEAMIN' WITH THE MILES DAVIS QUINTET)

(2007年07月07日)

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