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BASIEの音1

ジャズ喫茶で、言わずと知れた、岩手県一関市にあるベイシー。全国から、新幹線や飛行機に乗ってまでも、ベイシーの音を、ジャズを聴きに行く人も多いという、まさに言ってみればジャズ喫茶の聖地。そのベイシーへの訪問記を、最初は「徒然雑記・散歩」に気楽に書こうと思っていたのですが、音を聴いて、これは気楽に書ける音ではないし、一回行っただけでは掴みきれない懐の深さというか、奥の深さを感じたので、別ページで書いてみることにしました。

第1回目訪問(平成18年12月上旬)



 私が人生で一番最初にベイシーのドアを開けたのは、2006年の12月上旬でした。とにかく一階部分には窓ひとつない土蔵の造りで、ドアを開ける時には、気持ちの良い緊張感がありました。扉は二重になっており、店外からは全く中の音が聞こえません。ジャズに関する張り紙やポスターが期待を高めてくれました。

 

 店内に入ると、お客は3〜4人いたでしょうか。土曜日にしては少ないと感じました。そして窓ひとつない店内は薄暗く、裸電球に照らされた部分と、薄暗くて全貌が見えづらい巨大なダブルウーハーを持つスピーカーを、何とか店の奥に見ることができました。ベイシーの音は大音量だと聞いていましたが、パッと聴いた感じではそれほどの大音量ではありませんでした。



 店の試聴席からはなれた丸テーブルでは、店主とVIPなお客と思しき方々が談笑をしておりました。ジャズの音の間から、豪快な店主の笑い声が時折聞こえます。

 最初に聴いたソースでは、アナログディスクであるのにも関わらず、ヒスノイズはほとんど聴こえず、ドラムとサックスなどの金管楽器の明瞭度はには圧倒されました。ベースは生とくらべややボン付くような気がしましたが、ピアノが低音から高音までこれほど滑らかに再生されるのを、私は聴いたことがありませんでした。

 ベースのボン付くように聴こえるのはソースのせいでしょうか。そのほかの音は熱く濃厚でいて、とても優しい音です。最初に大音量という先入観があったので以外でした。薄暗い店内で目が慣れてくると膨大なアナログディスクの量に驚かされます。

 ベイシーの音は、ジャズはこういうモノなのかと自分の中で確認し始めたとき、奥の丸テーブルで談笑していたVIPのお客さんが帰りました。そしてその直後、明らかに音量が上がったのです。今まで私が聴かされていたのは、店主がVIPなお客さんと談笑するための音量だったのです。音の洪水、迫真のジャズが体に迫ってきます。

 もう少し、”通常の音”となったベイシーでのジャズを楽しみたかったのですが、時間が迫っていました。やむなく、名残惜しさを感じつつベイシーを後にしたのでした。そして、このジャズ喫茶は一度聴いただけでは分からない。自分にとって、何度も通ってみる価値のあるお店なのだと思いました。



(平成18年12月31日)

第2回目訪問(平成18年12月中旬)

 2回目は2006年の12月中旬に訪問しました。前回の訪問のときは時間がありませんでしたが、今回は時間をたっぷりとって、心行くまで楽しむ予定です。



 ということで、今回は一関駅前からのレポートにしました。いわゆる一地方都市の駅前です。商店街などはありますが、勢いが余り感じられません。ベイシーへは、一関西口の正面の通りの最初の信号を、まずは右に曲がります。



 一関はそばが有名です。おいしいそばといえば、地元の人に聞くと「ちょくりあん」を薦められますが、今回はベーシーへ行く途中の「清庵」のそばで腹ごしらえです。やっぱりジャズを真剣に聴くのにもエネルギーが要ります。空腹ではベイシーの音に太刀打ちできそうにありません。



 右に曲がった商店街をずっと真っ直ぐ歩き、スポーツクラブ(j地主町通り)が見えたら、今度は、左へ曲がって進みます。そして真っ直ぐ行き、2つ目の信号の右方向をみると重厚な造りのJAZZ SPOT BASIE が見えます。駅からは徒歩15分くらいだと思います。





 2回目の訪問ですが、やはり扉を開けるときには、期待と不安(たまに店主の機嫌が悪いことがあると聞くので)で少し緊張します。2枚の扉の向こうの薄暗い店内には、聞き覚えのある大音量のジャズがかかっています。



 この日は、特にVIPなお客さんもいないらしく、大音量でジャズが流れています。私は前回座った席と同じ、スピーカーの真中に近い席に座りました。座席の中に白い座布団がしかれているところは、店主や店員の特等席です。VIPなお客さんを相手にするときなどにも使われますので、座らないように気をつけます。(タバコの吸殻がテーブルに置いてあるので、すぐそこは座れない!とわりますけどね。)

 浸透力のある音です。こんなにも体に染み込んでくるジャズはここでしか聴けないのではないかと思うほどです。低音は、足や体を伝わって体内に染み込んできます。大音量ですが、分解能はものすごく、まるで音量を上げてもうるささを感じないSTAXのイヤースピーカーが、ラウドスピーカーになったような感じです。細かい音も、ビックバンドのすべての音も、細かく細かく、それがまろやかに鳴っています。

 低音はドラムやピアノはまるで本物のようです。そこで演奏しているような音量と、感触。俗にいうハイエンドスピーカーのようにスピーカーの奥に像を結ぶことは、聴き取れませんでしたが、本当にピアノの像が見えるようです。

 ただし、僭越ながら、ベースはボンつき気味のような気がしました。最初はソースのせいかなとも思ったのですが。前回と今回と合わせて、何枚ものディスクを聞きましたが、やはり、生の乾いたブルンというベースの鳴りとは少し違った、迫力を増した味付けがされていると思いました。ただし、この感想は、私が普段、スタックスやTD508という、低音に関しては非常に禁欲的な機器を愛用していることからくる思い込みかも知れません。

 本当にかなりの大音量で、特にビックバンドのディスクなどは、音の大洪水なのですが、店主は余裕の表情です。さも当たり前のように、タバコを吹かしながらリズムをとっています。とにかく音が有機的でありながら、人間味を感じさせる音で、うるささを感じさせない音には、まったく「まいった」と言うしかありません。素晴らしいジャズと音を、この日は2時間も楽しませていただきました。

 また来ようと思いました。こうしてジャズを楽しめたことに感謝しながら家路へと着きました。聴き続けて、スピーカーの間のレンガの向こうに、何か見えてくるかも知れません。



(平成18年12月31日)

第3回目訪問(平成19年01月下旬)

(第1日目)



 幸運なことに、ベイシーへ3日間連続で通うことができましたので、ここに報告がてら書いてみることにします。

 今年は暖冬のようで、岩手県一関市内でも、雪は全く見ることができません。遠くに見える山がいつもの冬なら真っ白なのですが、今年は、頂上だけがわずかに白くなっています。そんな暖かい一月の下旬にベイシーへ行きました。

 

 ベイシーの入り口の扉を2枚開けると、意外な程の小音量のジャズが耳に入ってきます。いつもは、前の席へ座るのですが、今日は一番後方の真ん中の席へ座ることにしました。Bill EvansのFory to Loveのディスクがかかっており、Evansの鮮やかでもどこか哀しげなメロディが店内に広がっていました。アナログのまろやかな感触が感じられ、ピアノのきついタッチなどは感じられません。

 続いて、Live at the half note. the art famer quartet featuring jim hallがかかります。ベースは生音に近く締まっています。ドラムの迫力は素晴らしいものがあります。Jim Hallのエレキギターは、特定の周波数でやや共鳴する音が聴こえますが、とても生々しく、電子楽器なのにどうしてこうもやさしい音色がでるのでしょうか。席も後方にしたせいか、店主が誰かと打ち合わせをしているせいなのか、大音量に感じません。私には丁度良いくらいです。ドラムのアタック音、シンバルのはじけるパルス音も、きつい音はせず、ドラムのソロの圧倒的な音に聴き惚れてしまいました。

 DUSKO GOYKOVICH/SOULCONNECTION Vol.Uのディスクがかかります。サックスの音とピアノの音が、体に迫ってきますが、迫力のある音なのにこんなにも優しい音にきこえるのはなぜなんでしょう。これがアナログディスクの味なのでしょうか。周りを見渡すと、平日にもかかわらずお客は5人になっていました。

 ここで、ふと思ったのですが、私は最近D/A Converterに、ReimyoのDAP-777を導入したのですが、ビクターのK2盤のジャズのCDを、DAP-777を通して、STAXのイヤースピーカーで聴く音も、なかなかどうして、アナログに極めて近い滑らかな音だと、このとき思いました。

 次には、男性ボーカルモノNAT KING COLEがかかります。腹と喉の奥からでる男性ボーカルの低音が、いとも簡単に出てきます。ただボーカルの音像はピンポイントに定位というわけにはいかないようですが。8cm径とか小口径のユニットでは、絶対に聴けないボーカルです。こういう音を聴くと、FE208ES-Rをミッドバスに使った時の男性ボーカルの再生は最高だろうな。などと。思ったりします。愛用している富士通テンのTD508も、女性ボーカルは最高なのですが、男性ボーカルの低音は迫力がいまいちだったりします。

 CANNONBALL & COLTRANE サックスの共演、いや競演か。右から左からサックスの音が炸裂してきます。しっかりとした低音の土台の上に乗ったサックスの輝きは最高の一言です。2曲目はスローテンポの曲調で、ピアノの低域から高域にわたる全帯域にわたる滑らかさ、フラットバランスさが美しい。心が曲の中へ完全に入りこんでジャズに同化するのではなく、音を分析的に聴いてしまうのは、オーディオマニアの性でしょうか。ちょっと悲しいです。

 私がこの日最後に聴いたディスクはWARKIN' WITH THE MILES-DAVIS QUINTETです。1曲目、流れるようなピアノの旋律にのってMILESのトランペットが聞こえます。ベースも生の音量。とても優しいメロディ。2曲目、洒落た夜の情景を思い浮かべるような、大人の曲。そして楽しくMILESは何を想って演奏しているのだろうと考えてみたりしました。

 女性の店員が、特等席でタバコを吸って、煙が薄暗いベイシーの電球に僅かに照らされ、何とも美しい光景が見えました。普段は、タバコを吸わない私もこのときばかりは、タバコを吸う人を羨ましく思ったりしました。

 帰りの際、このベイシーの空気を持って帰りたかったので、ベイシーで録音された「ケイコ・リー」Live at Basie のSACDを買ってしまいました。私のオーディオで、BASIEの空気を、うまく再生出来るでしょうか。


(Keiko Lee/Live at "BASIE")

 ちなみにこのSACDのジャケットの写真はベイシーの菅原正二店主が、愛用のライカで撮ったモノだそうです。私も、ライカとかまではいかないまでもCONTAX T3を愛用して、ポートレートなどを撮るのが好きなので、こんな素敵な写真をいつか撮ってみたいです。

 ちなみにこのページで写している写真はすべてCONTAX T3で撮ったものです。ホームページや何かに使うのには今やデジタルカメラの方が圧倒的に楽なのですが、立体感やボケ味などはT3のレンズが勝るようなので使っています。(T3のレンズの性能に自分の写真を撮る技能が追いついてないのが残念です。)

(平成19年03月03日)

第4回目訪問(平成19年01月下旬)

(第2日目)





 第2日目は土曜日でした。店内に入るとBUD POWEL/IN PARISのディスクがかかっています。続いて、DUSKO GOYKOVUCH/SOUL CONNECTION Vol.Uがかかりました。ボリュームは昨日と同じくらいでしょうか。リリカルなピアノに、楽しくリズムを刻むドラム、キックドラムの音も軽く、ポンポン出てきます。お客は4人でした。店主自ら切り盛りをしています。

 続いて、名盤中の名盤、Bill Evans/WALTZ FOR DEBBYがかかります。これは、自分でも良く聴き慣れたディスクだけに、自分のシステムとの違いが明確に分かります。ピアノの余韻が消え入るところ、美しい中にもどこか哀しげなメロディがこのうえなく美しいです。低音の土台がしっかりとしたピアノの美しさが感じられ、ベースも生の音量に近いと感じました。2曲目、ベースとピアノのやりとりの美しさは表現出来ないほどです。自分のSTAXのイヤースピーカーで聴くBill Evansが圧倒的に劣っているとは思いませんが、ラウドスピーカーの音色や迫力は全く違います。ベイシーで聴くこのディスクの方が、ずっと美しい。


(Waltz for Debby/Bill Evans Trio)

 本当はBASIEの店内の写真をCONTAX T3で撮りたかったのですが、腕に自信がないのと、店主に撮影の許可を頂くのが怖かったため(笑)、スケッチで店内の様子をノートに書いてみました。水性ボールペンで下書きもせずに一気に書き上げたので、所々矛盾した構図が見て取れますが、それはそれ(笑)。ベイシーの店内の雰囲気も外観と同じように、とっても趣のある内装だと思います。ずっと残しておいて欲しい空気。内装。椅子。壁にかかれたサイン。無造作に張られたポスターや写真。どれもベイシーに無くてはならない大切なモノだと感じました。


("BASIEの"の店内風景 スケッチ)

 CARMEN McRAGE ALONE/AS TIME GOES BYの女性ボーカルとピアノの伴奏のシンプルな録音モノがかかります。ピアノの伴奏の音色は絶品。店主は来客と話し込んでいます。そのための静かな選曲なのでしょうか。失恋の時に聴くとちょうど良い曲調と唄、どちらかというと哀しくなる唄。

 Cannonball Adderley with Bill Avans/Know what I mean? がかかります。WALZ FOR DEBBYとは一転楽しい穏やかな空気が流れます。深い深いベースのうごめきが聴こえました。

 この時点で大分時間が経ってしまいました。2時間以上もジャズ喫茶にいるのは初めての事です。(笑)ここで、名盤中の名盤。定番中の定番のArt Pepper meets The Rhythem Sectionがかかります。今日はこの盤で締めにしたいなと思って真剣に聴きました。良く聴き知ったディスクだけに、凄さがわかります。私のシステムではPepperが独り寂しくサックスを吹いている感じなのですが、ここベイシーではドラムやベース、ピアノもPepperのサックスに負けじと、次々に炸裂して孤独なサックスといったイメージがみじんも感じさせません。これはアナログディスクだからなのでしょうか。CDでもLINNのCD12のプレーヤーを使って、ベイシーで再生させたらこういう音が果たして出てくるのでしょうか。


(Art Pepper meets The Rhythm Section)

 結局この日は2時間半もベイシーに長居してしまったのでした。

(平成19年03月03日)

第5回目訪問(平成19年01月下旬)

(第3日目)





 三日目は15時20分頃にお店に入りました。JOHN COLTRANE/SET'N THE PAGEがかかっています。今日は真ん中の席に先客が居りましたので、左端の"JOHN COLTRAN"の席に座ります。ベイシーの椅子には、すべて寄贈者の名前とアーティスト名が背もたれの上に書かれています。

 お客は多く9人ほどいたでしょうか。家族連れでベイシーへ来られている方も見られます。JAZZ好きな一家でしょうか。今日も店主が一人でお店を切り盛りしています。COLTRANEのサックスが「楽しくやろうぜ」と呼びかけてくるような気がしました。

 どうも、今日はお客の人数が多いせいだけではなく、店内の雰囲気が明るいのです。前の店主の座る特等席を見てみると、なんと女子高生の姿が、オヤジやJAZZ狂のなかにパッと明るくさく一輪の花のように、趣のあるちょっと厳めしいベイシーの店内を明るくしてくれています。店主もしきりに女子高生に話しかけています。高校生でJAZZ喫茶ベイシーへ来るとは羨まし過ぎます。というか、将来が心配です。(笑)店主も女子高生と話してとても嬉しそう。(笑)

 何の話をしているのでしょうか。女子高生だと特等席で聴けるのですね。これも羨まし過ぎます。

 続いて、TOMMY FLANAGAN/Confirmationがかかります。トリオ構成で、ピアノの明瞭さ、まろやかさ、タッチの迫力は十分に美しく伝わってきます。ドラムソロでは、ドラマーがそこで叩いているかのように錯覚してしまう程。

 DUKE ELLINGTON/THE GREAT PARIS CONCERTのビックバンドのディスクがかかります。音量が上がったでしょうか。それともこれがソースなのか。音の大洪水。ピアノソロでffでも低音から高音までまるで歪感は無しです。このピアノ奏者はどんな勢いでピアノを弾いて、いや鍵盤を叩きつけているのでしょうか。楽しいの一言。

 LIONEL HAMPTON ALL STARS/STAR DUSTは、甘い音色、曲調、相当古い音源でしょうか。ビブラフォンの切ないシンプルな響きが静けさを感じさせてくれます。その次はMilt Jackson Quintet featuring Ray Brown/THAT'S THE WAY IT IS。ピアノの低音とベースで低音を刻む。ビブラフォンの音色が強く優しく胸を打ってきます。金属の輝きが感じられますが、とてもやさしい。

 3日目の最後はBeren merillの女性ボーカルモノで私は締めました。なめらかな女性ボーカル。今日のような華やかなベイシーは初めてです。やっぱりジャズにはオヤジや私、ジャズ狂ではなく、ジャスには女子高生というのが分かったのが収穫でした。(笑)


(ベイシー公認ホームページを載せている韓国家庭料理の店ToRonTo)

韓国家庭料理の店ToRonToベイシー公認ホームページ

(平成19年03月03日)

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