ホームその1その2
富士通テンEclipse TD508PAについて

〜富士通テンECLIPSE TD 508PAについて、メーカーのホームページでは、タイムドメインという大まかな概念の解説と、エンジニアや演奏家によるECLIPSEの賞賛記事を見ることができます。それらがメーカーの広告ということを割り引いて考えても、とても魅力的にな製品に思えてきます。私自身も、このスピーカーの自然な音や定位感が好みだったので愛用してきました。しかし、周波数特性など具体的な数値が雑誌やホームページに掲載されることがあまりないため、どのような特性を持っているのか知りたいと考えていました。そこで、周波数特性やインピーダンス特性など、いくつか測定を行ってみたので、データをまとめてみることにしました。〜

富士通テンECLIPSE TD 508PAの詳細

TD508(スピーカー)



タイムドメインという考え方に基づいて作られたというスピーカーです。通常のバッフルにユニットを取り付ける方法ではなく、ユニットのお尻をグランドアンカーに固定して、バッフルはグランドアンカーから緩衝材を挟んで支持することにより、ユニットの振動がエンクロージャーに伝わりにくい構造となっています。上級機のTD512では、グランドアンカーからエンクロージャーを支える部分に、シリコン製の緩衝材が使われていたと思いますが、このTD508ではフェルト製になっています。内部には少量の吸音材が巻かれています。タイムドメイン社のYoshii9のエンクロージャー内部は、かなりの量の吸音材が使われているのとは大分違っています。

TD508の外観については、ほとんどのスピーカーが直方体の形状をしている中で、とてもユニークです。



形状的には、流麗なたまご型のエンクロージャーによって、バッフルステップや回折の影響が最小限に抑えられていると思われます。エンクロージャー内部に平行面がないため、定常波が起きにくいのも利点でしょうか。バッフルを外してみると、ユニットは、フォステクスのFE87Eによく似たものが使われています。振動板の素材は紙、エッジはゴム製となっています。



ユニット以外から余分な音を出さないということをコンセプトにしているTD508ですが、音量を大きくしてエンクロージャーに触れてみると、振動を感じ取ることができます。やはりユニットをグランドアンカーに結合させ、エンクロージャーは剛性の高い卵型にして、かつフェルトや弾性系の緩衝材で浮かせていても、エッグシェルの質量なりの限界はあるようです。

2世代目のTD508Uは、さらに改良が進んでいるはずなので、今度どこかで聴いてみたいと思います。

A501(アンプ)

[仕様アンプ部]
定格出力:12W
最大出力:15W
出力形式:BTL出力
全高調波歪率:0.05%(8W出力時,1kHz)
周波数特性:10Hz〜100kHz(記号±3dB)
入力感度:200mVrms(12W出力時)
信号対雑音比:65dB
分離度:60dB
入力インピーダンス:10kΩ
適合負荷インピーダンス:8Ω
外形寸法:W159×D142×H158(mm)
質量:約1.5kg

[仕様ACアダプター部]
入力電圧:AC100V(50Hz/60Hz)
出力電圧:DC+15V
出力電流:DC 3A
外形寸法:W130×D92×H67(mm)
質量:約1.6kg

付属のアンプです。TD508と同様にとてもユニークで円錐形の流麗なデザインが目を引きます。構造は、入力1系統に電源スイッチ、ボリュームしかなく、当然リモコンもないので非常に単純な造りです。電源のACアダプターは本体なみに巨大です。説明書記載のS/N比や全高調波歪率などのスペックは、いささか心もとない数値となっていますが、説明書から引用すると、…この商品は、タイムドメイン理論に基づくスピーカーとその性能を最大限に発揮するために設計されたアンプのシステムです。…と記載されており、スペックよりもタイムドメイン理論を忠実に再現するよう、優先させた性能があるのかもしれません。

確か、サイデラマスタリングでは、シャープの1bitコンポとエクリプスTD 508の組み合わせのシステムを推奨していたと思いますが、個人的にも、A501の次世代のアンプには、シャープの1bitチップなんかを載せた小型のデジタルアンプを期待したいところです。

D3(スピーカースタンド)

たくさんのスタンドが市販されていますが、富士通テンのECLIPSEとデザイン的に合うものは、純正スタンド以外にないと思います。スタンドとスピーカーのグランドアンカーは、ネジ1本で剛結合させる構造になって、スタンドは思ったよりも質量があります。スタンドの高さはやや高めに設定されているので、ソファーや低めの椅子に座って聞く場合には、ちょうど良い高さになると思いますが、座椅子や床に座って聴くのには、やや高すぎるようです。

個人的な経験は、このTD508は、自分の目の高さと同じか、それよりもやや低いくらいに設置しないと、定位感が出にくいように思います。

シリコンライカル線(スピーカーケーブル)

スピーカーケーブルとして付属するシリコン被膜のケーブルです。とても細く、より線で柔らかいため、取り回しは非常に楽です。市販されている多くのケーブルが、線径が太く立派な外観をもつのに比べ、いかにも細身な感じがしますが、A501の取扱説明書やメーカーのホームページにも推奨ケーブルと記載され、タイムドメイン社のYoshii9にも、このケーブルが生え出しで使われているようです。小さくスマートなTD 508に、極太のケーブルでは外観的に似合わないのは確かです。ただし、線径が小さいことによる直流抵抗の大きさは気になるところなので、どのような理論で、この細くて柔らかいケーブルが推奨されているのか知りたいものです。

私は、付属のケーブルをそのまま使っています。より線で線径が小さいため、表面が酸化しやすく、時々剥き直す必要があります。私は、剥き直すことが頻繁にあるため、そのうちターミナルとの接続部に、短い銅単線を半田付けしようかと考えています。シリコンライカル線は、オヤイデ電気などで手に入ります。私は当初、付属ケーブルがホットとコールドで線の色が異なるのが気に入らなかったので、オヤイデ電気で白の被膜のライカル線を手に入れましたが、その後慣れたので、付属のものをそのまま使い続けています。

細かいことですが、富士通テンに付属の線と、オヤイデ電気で手に入れたものとをよく見比べてみると、シリコン被膜の厚みや、線のより方にも若干の違いがあるようです。

タイムドメイン社・四十七研究所

タイムドメイン社、四十七研究所、富士通テンを見てみると、富士通テンとタイムドメイン社は似ていて当然なのですが、3社とも、フルレンジスピーカー、大型ACアダプター+小型ICアンプ、極細スピーカーケーブルの製品を造っており、何か共通の設計思想を感じます。

TD508の周波数特性の測定

富士通テンのTD508PAの周波数特性をMyspeakerで測定してみました。ただしメーカーのように無響室での測定とはいかないので、部屋の音響特性や外来騒音、測定機器(マイク、マイクアンプ、サウンドカードなど)の誤差を含んだ結果となっています。測定を行った部屋はおおよそ8畳で、わりとデッドな部屋だと思います。測定方法は、サウンドカードのライン出力をA501のアンプに入力してTD508を駆動して行いました。メーカーなどでは周波数特性を、軸上1mと3mくらいで測定していると思いますが、今回の測定では、反射を抑えるために、よりマイクを近接させて測定しました。結果を図1.1〜図2.4に示します。

[使用測定機器]
・スピーカー:TD508
・アンプ:A501
・サウンドカード:ONKYO SE150PCI
・マイク:べリンガー ECM8000
・マイクプリアンプ:べリンガー MIC100


[図1.1:軸上10cmサインスイープ]


[図1.2:軸上10cmピンクノイズ]


[図1.3:軸上10cmクロマチック]


[図2.1:軸上30cmサインスイープ]


[図2.2:軸上30cmピンクノイズ]


[図2.3:軸上30cmクロマチック]


[図2.4:軸上30cmインパルス]


図1.1〜2.4まで、測定信号は異なっても、結果は良く似たグラフとなっています。低域は特に部屋の定常波や外来ノイズの影響を大きく受けているので、参考にするにしても100(Hz)より上の帯域だと思います。確か、長岡鉄男先生の記事で、自作バックロードホーンスピーカーのスペアナが良くでていましたが、スピーカーからマイクの距離を1mから3mに離すほど、F特の乱れは落ち着いていたような記憶があります。しかし、今回いろいろ測定してみて、スピーカーらかマイクの距離は離すほどグラフの凹凸が大きくなり、近づけるとよりフラットに近づきました。

グラフを見ていくと、150(Hz)付近のピークは、部屋の特性と重なった可能性が高いと思いますが、それとも150(Hz)付近を多少盛り上げて、低音の量感を稼ぐ設計になっているのでしょうか。

富士通テンのサイトに、TD508の再生周波数帯域は55(Hz)〜20k(Hz)-10dBとなっていますが、150(Hz)より低域は、音圧が低下していくので、低音の基音部分となる100(Hz)以下の再生はかなり小さくなってしまうように思います。TD508が、テクノや音響系の深く伸びる打ち込みの低音が苦手なのも分かります。TD508で低音を再生する場合、低音にパルス成分が含まれていれば良いのですが、単なるサイン波に近い低音は、振動板の面積とエンクロージャーの容積がないと、物理的にどうしようもないのでしょう。

高域方向を見ると、8cm径のフルレンジだけあって十分に伸びているように思います。ただし、10k(Hz)付近の大きなディップがなぜ現れるのかよく分かりません。

また、今回インパルスによるF特の測定では、まともな測定結果を得られるとは考えていなかったので、こんなにも他の測定結果に近い値が得られると思いませんでした。擬似的なパルス成分を、わりあい正確にサウンドカードで出力し、アンプで増幅できていたのではないかと思います。

インパルス測定において、PLAXISのように部屋の反射を伝わる時間以上の成分をカットして演算できれば、中高域においては擬似的な無響室の特性が得られるのですが、このMyspeakerではそこまでの機能はないようです。

今回の測定は軸上10cmと30cmでおこなったので、スピーカーではなくユニットの音を測定しているような状態になってしまったと思います。部屋の音響特性も相当加味された測定になっているように思えます。メーカーのように1mとか3mとはいかないまでも、軸上50cmくらいの測定など、広い部屋で吸音処理をして再実験をしてみる予定です。

TD508のインピーダンス特性の測定

富士通テンECLIPSE TD 508のインピーダンスを測定してみました。測定方法は、Myspeakerのヘルプを参照して、図2のように、スピーカーと直列に0.5Ωの抵抗をつなぎ、その抵抗の両端にかかる電圧を、サウンドボードのライン入力で測定する方法で行いました。ただし、富士通テンの502AはBTLアンプなので、この測定に使用すると破損の危険があるため、手持ちの別のアンプでスピーカーを駆動しました。

測定結果を図3.1〜3.3に示します。ただし、通常の状態[図3.1]、バスレフポートを塞いで密閉にした状態[図3.2]、エンクロージャーを取り除いて裸のユニットの状態[図3.3]でそれそれ測定しています。

[使用測定機器]
スピーカー:ECLIPSE TD508
アンプ:KENWOOD A-1001
サウンドカード:ONKYO SE150PCI
スピーカー駆動アンプ:KENWOOD A-1001

[図2]


[図3.1]通常の状態で測定


[図3.2]ポート塞いで密閉にした状態で測定


[図3.3]裸のユニットの状態で測定


図5.1のインピーダンス曲線から、インピーダンスの山が2つあるので、TD508はバスレフ動作していることが分かります。さらに山の間の谷の最もインピーダンスの低い部分が、バスレフポートの共振周波数になるので、ポートの共振周波数は、だいたい80(Hz)ぐらいだと思います。

TD508のエンクロージャーの容積は、だいたい目分量で2.0〜2.5Lくらいだと思います。2Lのペットボトルと比較すると同じくらいに見えます。同じ8cm径のFostexユニットの標準エンクロージャーが4.5L〜6.0Lくらいなのと比較すると、とても小さい容積です。

TD508のエンクロージャー容積を2.0(L)と仮定すると、
ポート直径:21(mm)
ポート長さ:65(mm)
から逆算してポートの共振周波数Fbを求めると、
ポートの共振周波数Fb≒80Hz
と、計算でもポートの共振周波数はだいたい80Hzくらいになります。

TD508のポートの共振周波数が80(Hz)というのは、8cm径のユニットで、エンクロージャーの容積が2.0(L)程度しかないのを考えると、かなり低めな値のように思います。Fostexの8cmユニット(FE83E,FE87E,FF85K)の、バスレフ標準エンクロージャーのポートの共振周波数は、だいたい75〜110(Hz)くらいになっています。周波数特性の測定では、60〜80(Hz)付近にどの測定でも山が見えます。当初は部屋の定常波か何かだと思っていましたが、ポートの共鳴音かもしれません。それでも測定で60から80(Hz)と20(Hz)もずれる原因が分かりません。

TD508のポートの直径は2cm程度しかなく(fostexの標準箱は4cmある)、そのわりにポート長さは65mmもあるので、バスレフとしてはポートの抵抗が大きいように思います。

エンクロージャー容積が小さいということは、低音を出すのは難しくなりますが、群遅延特性は良好なはずです。また、ダクトの周波数が低いと、男性のボーカル帯域とも重なりにくいという利点もあります。普通こんな設計をすると、200(Hz)以下だら下がりとか、変な特性になってしまいそうですが、150(Hz)くらいまではフラットに出しているところは、さすがメーカーだと思います。

図3.2は、ポートにティッシュを丸めてきつく塞ぎ、密閉型のエンクロージャーにして測定した結果です。インピーダンスの山が140(Hz)くらいにひとつできて、あたりまえですが密閉型の特徴になっています。

図3.3は、卵型のエンクロージャーを外して、裸のユニットの状態で測定したインピーダンスです。Myspeakerには、ユニットを裸でインピーダンス測定をすると、簡易的にfoやQoなどのパラメーターが算出されるようです。T/Sパラメータでも表示されています。測定誤差や製造によるユニットごとのバラツキも考慮しなくてはなりませんが、

fo=109.21(Hz)
Qo=0.90
Qm=2.51 と算出されています。

このページの始めの方に、TD508に使われているユニットが外観的にFostexのFE87Eに似ていると書いたのですが、FE87Eのfoは140(Hz)なので、スペック的にはずいぶんと異なった結果になりました。foが低いということは、FE87Eより磁気回路がそう強力にも見えないので、TD508のmoはずいぶんと重くしているように思います。Yoshii9のに使われているユニットとFostexFE87の外観的な類似から、TD508のユニットもFostexのFE87Eベースではないかという先入観が働いていました。

インピーダンス曲線の1.2k(Hz)くらいの所に、小さな段差が見られるよう気もしますが、縦軸方向に拡大できないので、詳しく見ることができません。そこで、図3.4、図3.5の通り、Myspeakerの"サインスイープによるF特測定"でインピーダンスを測定してみました。

[図3.4]通常の状態で測定(レンジ60dB)


この方法でも、十分インピーダンスの特性を見ることができます。ひっくり返せば図3.1のグラフと同じです。ただこれでも1.2kHz付近の段差はよく分からないので、図3.5のようにレンジを10dBにして表示します。

[図3.5]通常の状態で測定(レンジ10dB)


やはり、1.2kHz付近のインピーダンスに、明らかに段差のようなものが確認できます。ステレオ誌2003年8月号の記事には、インピーダンスカーブで小さな段差があるところはエッジの逆共振が起こっており、それより高域は分割振動域であるというように書いてあります。なので、これがエッジの逆共振だとすると、8cm径にしてはずいぶんと低い周波数に現れているように思います。(個人的には8cmという小口径ですから、3kHzくらいまではピストンモーションしていて欲しかったです。)エッジが重いゴムというのも関係するのでしょうか。

この測定には大きな誤差が出ている可能性があったので、図4のように、スピーカーの代わりに8.2(Ω)と15(Ω)のセメント抵抗をつないでインピーダンス測定をした結果を、図5.1と図5.2にのせておきます。

[図4]


[図5.1]


[図5.2]


純抵抗のインピーダンス測定なので、サウンドカードの出力特性、アンプの出力特性、サウンドカードの入力特性がフラットであれば、どの周波数でもフラットに8.2(Ω)、15(Ω)となるはずですが、図5.1、図5.2の通り、ほぼフラットになっています。使用したサウンドカードとアンプの特性はそこそこ優秀なようです。これで、インピーダンス曲線から、ポートの共振周波数とか高域のインピーダンス上昇など、基本的なことは参考にできそうです。

インピーダンス値を正確に知りたい場合、この測定方法では手入力したスピーカーの公称インピーダンス値を、最低インピーダンス値に割り振ってグラフを書いているようなので、公称インピーダンスを含めて正確に測定するためには、測定中に既知の抵抗に切り替えるなどして、相対的に縦軸の目盛りと重なるかどうか確認する必要があると思います。

参考文献・引用文献など
富士通テンECLIPSE TD 508,A501,D3取扱説明書
音楽之友者「stereo 2003年8月号」
フォステクスカタログ

ホームその1その2